日本の「ベジタリアン」には、卵が入ることがある|インドの菜食・ジャイナの人は、食べない物の名前で伝える

このサイトでは、旅の手がかりとして、日本の観光庁・農林水産省・消費者庁・日本政府観光局、インドの食品安全基準局などの資料をもとにした情報を提供しています(2026年10月時点)。食べる・食べないの線は、宗教や家庭や一人ひとりで違います。この記事は、その線を日本でどう伝えるかの話です。

日本政府観光局の、ベジタリアンとヴィーガンの旅行者に向けた案内を読んでいると、コンビニの棚で「ベジタリアンなら選べる物」として、チーズと並んで、うずらの卵が出てきます。

インドから来た人なら、ここで少し首をかしげるかもしれません。インドの包装食品の表示の決まりでは、卵は「ノン・ベジ」の側に入るからです。

同じ「ベジタリアン」という言葉でも、線を引く場所が少し違う。日本の食事を楽しむための予習は、そこから始まります。

見ておくのは、次の3つです。

・インドの表示の決まりでは卵は菜食に入らないが、日本の「ベジタリアン」には、卵を食べる人も入る

・だから「ベジタリアン」の一言ではなく、肉・魚・卵・だし、そして人によっては玉ねぎ・にんにく・根菜まで、名前で伝える

・コンビニやスーパーの包装食品なら、「卵」の字は表示で自分で探せる

1 同じ言葉、ずれる線 ― 卵のところで

インドの表示の決まりでは、卵は「ノン・ベジ」

インドの食品安全基準局(FSSAI)が定める包装食品の表示の決まりでは、「ノン・ベジタリアンの食品」は、動物や鳥、魚介、そして卵などを含む食品のことです。乳と乳製品、はちみつは、そこに入りません。それ以外の食品が「ベジタリアンの食品」で、緑の四角の中に緑の丸の印が付きます。

つまり、この決まりの「ベジ」は、卵なし、乳とはちみつは入ってよい、という線です。

日本では、「ベジタリアン」は卵を食べる人も含む言葉

日本の観光庁は、店や宿に向けた案内で、ベジタリアンを「肉や魚介類を食べない人で、卵や乳製品を食べるかどうかは人によって変わる」と説明しています。

農林水産省が定めた国の規格(JAS 0025)も、同じ分け方です。この規格では、「ベジタリアン」は、卵と乳製品を食べる人、卵を食べる人、乳製品を食べる人の3つをまとめた言葉です。インドの表示の「ベジ」にいちばん近いのは、その中の「乳製品摂食ベジタリアン」(乳製品は食べる、卵は食べない)になります。

日本政府観光局も、日本では「ベジタリアン」は外から入ってきた言葉で、意味がはっきりせず、広い意味で受け取られることが多いと書いています。ベジタリアンの料理を、と頼むだけでは足りないかもしれない、とも。

冒頭のうずらの卵は、その分かりやすい例です。同じ案内は、お好み焼きを「卵を使うので、ヴィーガンではないがベジタリアン」の料理として紹介しています。

卵は、見えないところに入っている

卵は、目玉焼きの形をしているとは限りません。

観光庁が店向けに示している料理の例では、ふつうの天丼の衣に卵を使い、ベジタリアン・ヴィーガン向けに直すときには衣から卵を抜いています。味噌煮込みうどんの例でも、ふつうのものには卵が入り、ベジタリアン・ヴィーガン向けでは外しています。

野菜の天ぷらは、日本政府観光局が菜食の人に勧める料理の1つです。卵を食べない人は、衣に卵を使っているかを、頼む前に聞いておくと安心です。

2 インドの人がとくに見ておきたい、見えない材料

だし

日本の料理には「だし」を使うことが多く、そのだしには、かつお節など魚からとったものがあります。肉や魚が見えない料理にも、かつお節などが隠れていることがよくあり、コンビニの納豆に付いてくるたれも、だしであることが多いと日本政府観光局は書いています。

だしのことと、「昆布やしいたけのだしなら食べられます」という伝え方は、「食べられない物を伝えるカード」の記事にまとめています。

日本のカレー

インドの人がいちばん意外に思うかもしれないのが、日本のカレーです。

観光庁は店向けの案内で、カレールーに入っている動物性の原料として、ラードや牛脂、動物性のブイヨンやエキスを挙げています。野菜だけのカレーに見えても、ルーのほうに動物からとった物が入っていることがあるわけです。

食べてみたいなら、具だけでなく「ルーに動物からとった物を使っていませんか」まで聞いてみてください。

3 ジャイナ教の人へ ― 避ける物は、人によって違う

調査でも、線は一つではない

インドで約3万人に聞いた Pew Research Center の調査(2019〜2020年)では、ジャイナ教の人の約3分の2が、にんにくや玉ねぎなどの根菜を食べないと答えています。裏を返せば、全員ではありません。ヒンドゥー教のベジタリアンの人でも、根菜を食べる人と食べない人が、ほぼ半分ずつでした。

だからこの記事では、「ジャイナ教の食事はこれ」と決めて書きません。自分が避ける物を、自分で書きます。

「ベジタリアン・ヴィーガン対応」でも、にんにくはそのままのことがある

観光庁が店向けに示すペペロンチーノの例では、ベーコンをきのこに替えてベジタリアン・ヴィーガン向けにしても、にんにくはそのまま残っています。

この例で外しているのは、動物からとった物です。玉ねぎ・にんにく・根菜まで外したいなら、それは別に伝えます。

精進料理は、にんにくと玉ねぎを使わない

その点で目を引くのが、寺の料理「精進料理」です。日本政府観光局によると、精進料理は伝統的にヴィーガンで、にんにくや玉ねぎのような香りの強いものも使いません。ただ、乳製品を使うことはあるので、前もって確かめるよう勧めています。それ以外の野菜のことまでは、この案内には書かれていません。

精進料理はほとんど寺で出されるもので、旅のあいだ毎日食べられる料理ではありません。宿坊(寺の宿)に泊まる日の、特別な一食として考えておくのがよさそうです。

4 カードに書く ― 一言ではなく、名前で

日本政府観光局は、注文のときは食べられない物を具体的に言うこと、食べられない物を日本語で書いた説明やカードを印刷しておくことを勧めています。

下の文例は、そのまま見せても、書き足したり消したりしても使えます。カードの作り方と見せ方は、「食べられない物を伝えるカード」の記事にあります。

卵を食べない菜食の人の例

わたしは、肉と魚を食べません。卵も食べません。

かつお節や煮干しのだしも食べません。

牛乳やチーズなどの乳製品は、食べられます。

玉ねぎ・にんにく・根菜も避ける人の例

わたしは、肉と魚と卵を食べません。かつお節や煮干しのだしも食べません。

玉ねぎ、にんにく、ねぎ、じゃがいも、にんじん、大根、しょうがも食べません。

土の中で育つ野菜は、食べません。

2つ目の例の野菜の名前は、自分が避ける物に合わせて足したり消したりしてください。ほかに避ける物があれば、その名前も同じように足します。揚げ物の油を肉や魚と分けているかまで気になる人は、「肉や魚を揚げた油で揚げた物も食べません」と1行足せます。

最後に「ありがとうございます。」と1行あると、カードを渡す時間が、ちょっとしたあいさつになります。

5 コンビニと、店の「印」

包装食品の「卵」の字は、自分で探せる

日本では、包装された加工食品に、アレルギーの原因になる物の表示が義務づけられています。卵と乳は、容器包装された加工食品で表示が義務づけられている品目です。卵は「玉子」「たまご」と書かれることもあります。

アレルギーのための決まりですが、卵を食べない人にとっても、原材料の欄に「卵」の字があるかどうかが、自分で確かめられる手がかりになります。

ただし、これは包装された食品の話です。店で出す料理や、その場で作って売る物には、こうした表示の義務がありません。そこはカードで聞きます。

包装食品でも、豚肉・牛肉・鶏肉・ゼラチンは、表示が勧められているだけの品目です。消費者庁が念を押すとおり、表示がないことは、入っていないことの証明にはなりません。

日本政府観光局によると、コンビニのおにぎりは魚の具が多いものの、梅干しや昆布のものもたいていあります。卵が入っているかは、原材料の欄で自分で見られます。ただ、かつお節や煮干しのだしは、表示の義務がある品目にも、勧められている品目にも入っていません。だしが気になるときは、カードを見せて店の人に聞きます。

「ベジタリアン」の印は、何を約束しているか

日本政府観光局によると、いまは多くの菜食の店が、ヴィーガンやベジタリアンの団体の認証ステッカーを掲げています。

その1つ、ベジプロジェクトジャパンの認証の基準を読むと、商品の「ベジタリアン認証」は肉や魚介類とそれに由来する物を使わないことが対象で、卵は外す物に入っていません。「ヴィーガン認証」は、肉・魚介類に加えて、卵・乳製品・はちみつも使わないことが対象です。包装に印があるなら、卵が入っていないことまで基準で決まっているのは、ヴィーガンの印のほうです。

ただし、この基準は動物からとった物についての決まりで、玉ねぎやにんにく、根菜のことは書かれていません。また、この団体の店の認証は、ヴィーガンの基準を満たす主なメニューを1つ以上出す店や宿が取れるものです。印があっても、その店のすべての料理が当てはまるわけではありません。

ほかの団体の印の基準は、この記事では確かめていません。どの印でも、気になる物はカードで確かめます。

6 予約と宿 ― 前もって伝えるほど、選べる

食べられない物は予約のときに伝えておくよう、日本政府観光局は勧めています。コース料理の店なら、なおさらです。予約の取り方は「レストランの予約」の記事にあります。

大きな街の外を旅するなら、旅館という手もあります。日本政府観光局は、食べられない物を前もって細かく伝えれば、菜食の日本料理を用意できる旅館がある、として、旅館に泊まることを勧めています。菜食の料理を得意にしている宿もあるそうです。旅館で過ごす一晩の流れは、「旅館の1泊」の記事にまとめています。

カードが1枚あれば、店の人と一緒に1皿を選べます。天ぷらの衣のこと、カレーのルーのこと、だしのこと。聞いてみて食べられた1皿は、旅のなかで自分で選んだ、日本の味になります。

まずは、これだけ

日本の「ベジタリアン」には卵を食べる人も入る。「卵も食べません」まで書いたカードを持っていく。

玉ねぎ・にんにく・根菜を避けるなら、その名前も1つずつ書く。「ベジタリアン・ヴィーガン対応」の一言では外れないことがある。

包装食品は原材料の「卵」の字を見る。店の印は、何を外す印かを確かめる。