靴を脱ぐ・スリッパ・浴衣|宿の中の決まり

旅館に着いて玄関を入ると、すぐ先の床が一段高くなっている宿があります。

旅館の玄関の外観。ひさしの下に自動ドアがあり、柱には注連飾りが掛かる。
旅館の玄関の外観。ひさしの下に自動ドアがあり、柱には注連飾りが掛かる。

旅館の玄関から先は、ホストの「家」。日本の家に上がるときと同じように、靴を脱いで上がります。

靴を脱いでスリッパに。畳の部屋では、そのスリッパも脱いで素足に。1つ脱ぐたびに、家の奥へ入っていきます。部屋に着いたら、浴衣に着替えてくつろぐ番です。

この記事で見るのは、3つです。

  • 靴とスリッパ ― 1つ脱ぐたびに、家の奥へ
  • 浴衣 ―「左が上」だけ覚えておく
  • お楽しみ ― 浴衣と下駄で、温泉街へ

1 靴を脱いで、宿の「家」へ

旅館の玄関ホール。手前の土間から、一段高い床(上がり框)、畳の間へと続く。右に靴が並び、左に靴箱がある。
旅館の玄関ホール。手前の土間から、一段高い床(上がり框)、畳の間へと続く。右に靴が並び、左に靴箱がある。

靴を脱ぐ場所は、宿によって違います。昔ながらの旅館では、玄関で脱ぎます。玄関を入ってすぐの所に一段高い床があれば、そこに上がる前に。客室に入る前、部屋の入口で脱ぐ旅館もあります。

脱いだ靴は決められた場所に置き、宿のスリッパに履き替えます。はじめてでも、靴の脱ぎ方や浴衣のことは、宿の人が教えてくれます。

城崎温泉(兵庫県)の案内が玄関の作法に挙げるのは、靴を脱いだ足では下の段に降りないこと、脱いだ靴のつま先を扉のほうへ向けておくこと。向きをそろえておくと、出かけるときは、そのまま足を入れるだけです。一段上がった先が、今夜のあなたの「家」です。

足の事情で、靴を脱いだり素足になったりするのが難しい人は、予約の前に宿に相談してみてください。

2 宿の中はスリッパ、畳の上は素足で

畳の客室。座卓と座椅子があり、奥の板の間に窓とテーブルがある。畳の上は素足か靴下で歩く。
畳の客室。座卓と座椅子があり、奥の板の間に窓とテーブルがある。畳の上は素足か靴下で歩く。

宿の中は、スリッパで歩きます。

畳の部屋に入るときは、そのスリッパも脱ぎます。畳の上は、素足か、靴下やストッキングで。

畳は、素足で歩くための床。大きな荷物を引きずると傷みやすいので、スーツケースは持ち上げて運びます。運び込んだら、あとは畳の上で足をのばすだけです。

靴、スリッパ、素足。この順番は、旅館だけのものではありません。秋田県の、民家に泊まる民宿の案内にも、家の玄関で靴を脱ぎ、畳の上ではふつうスリッパを脱いで歩く、と同じ順番が書いてあります。旅館に1泊すると、日本の家への上がり方を、そのまま足で覚えられます。

トイレには、トイレのスリッパ

城崎温泉の案内によると、トイレの入口には、トイレ用のスリッパが別に置いてあります。トイレの中だけで履くスリッパです。

3 浴衣 ―「左が上」だけ覚えておく

部屋に置かれた浴衣。畳んだ浴衣の上に紺色の小さな布が2つ載り、横にはタオルを入れたカゴが並ぶ。
部屋に置かれた浴衣。畳んだ浴衣の上に紺色の小さな布が2つ載り、横にはタオルを入れたカゴが並ぶ。

旅館では、たいてい浴衣が用意されています。部屋に置いてある宿もあれば、浴衣のコーナーで選ぶ宿もあります。

お風呂のあとや、部屋でくつろぐときに着るものです。

着方

城崎温泉と秋保温泉(宮城県)の着方の案内は、下着の上に浴衣を着るところから始まります。

  1. 袖を通して、浴衣をはおる
  2. 右側の布を、自分の左の腰のほうへ合わせる
  3. その上に、左側の布を重ねる。裾の長さがそろっているかを見る
  4. 帯を2〜3回巻いて、ちょう結びにする

帯は、女性はウエストに、男性は腰骨のあたりに。結び目は前のままでも、後ろへ回してもかまいません。

覚えるのは、自分から見て左側の布が上、の1つだけ。城崎温泉の英語の案内によると、逆に右を上にするのは、伝統的に亡くなった人に着せるときの合わせ方です。だから、「左が上」。

胸元と裾をきちんと合わせておくと、歩いてもはだけず、きれいに見えます。風の強い日は、裾の合わせ目を片手で押さえて。

サイズと上着

サイズが合わないときは、フロントに言えば替えてもらえる宿があります。女性向けの浴衣を無料で貸してくれる宿も。

浴衣の上に重ねる「羽織」(上着)を一緒に用意している宿もあります。

4 宿の中は、浴衣とスリッパで

旅館の中は、浴衣とスリッパのまま歩けます。

部屋で浴衣とスリッパに着替えたら、そのまま大浴場へ。

宿の中に売店や食事処があれば、浴衣とスリッパのまま使える宿もあります。決まりは宿によって違うので、チェックインのときに、浴衣でどこまで行けるかを一緒に聞いておくと、あとは迷わず宿の中を歩けます。

5 お楽しみ ― 浴衣と下駄で、温泉街へ

浴衣のまま宿の外へ出られるかは、宿によって違います。スリッパも同じです。

でも、浴衣で町を歩くこと自体が楽しみになっている温泉町もあります。

兵庫県の城崎温泉では、泊まる宿から、町歩き用の浴衣と下駄が貸し出されます。町の案内は、ふだんの服でもかまわないとしたうえで、浴衣で町を歩くことを強くすすめています。店も、飲食店も、バーも、見どころも、浴衣の人を歓迎しているそうです。

7つの外湯(共同浴場)を、浴衣と下駄でめぐる。通りに響く下駄の「からん、ころん」という音も、この町の楽しみの1つとして案内されています。寒い季節は、浴衣の上に暖かい上着を重ねて、雪の日も浴衣のまま歩けます。

山形県の銀山温泉でも、浴衣で通りを歩いたり、店を見て回ったり、川のそばの足湯に足をひたしたりする泊まり客を、よく見かけるそうです。冬の夜には、ガス灯の明かりの下を、浴衣にコートを重ねた泊まり客が歩きます。

庭で知られた旅館の中には、下駄や草履をはいて、浴衣で庭を歩ける宿もあります。

浴衣で外へ出たいときは、チェックインのときに、浴衣のまま出かけてよいかを聞いておきます。あとは、下駄の音を鳴らしながら、湯上がりの町へ。

ホテルの館内着とは、ここが違う

「ビジネスホテル」のようなホテルにも、部屋に館内着を用意しているところがあります。館内着のまま大浴場やレストランへ行けるホテルもあれば、寝間着やスリッパのまま客室から出ないよう、宿の決まりに書いているホテルもあります。浴衣のまま、宿じゅうを気がねなく歩けるのは、旅館に泊まる楽しみの1つです。

まずは、これだけ

  • 靴は、玄関か部屋の入口で脱いで、スリッパに
  • 宿の中はスリッパ。畳の上は、スリッパも脱いで素足か靴下で
  • 浴衣は「左が上」。自分から見て左側の布を上に重ねる
  • 部屋で浴衣とスリッパに着替えて、そのまま大浴場へ
  • 浴衣で外へ出たいときは、チェックインのときに聞く。浴衣で歩ける温泉町もある

あとは浴衣に着替えて、今夜の「家」でくつろぐだけです。

参考にした公式情報(17件)

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