このサイトでは、旅の手がかりとして、消費者庁・日本政府観光局などの案内をもとにした情報を提供しています(2026年10月時点。医療の助言ではありません)。食物アレルギーのある人の外食について、消費者庁は「医師の指導に従うことが大切」としています。
注文を取りに来た店の人に、小さなカードを1枚見せます。そこには日本語で、こう書いてあります。「わたしは、肉と魚を食べません。かつお節のだしも食べません」。
アレルギーがある人も、肉や魚を食べない人も、豚肉やお酒を口にしない人も、この記事では、同じ形の1枚を提案します。食べられない物を、日本語で書いた1枚。
見ておくのは、次の3つです。
・話すより、書いて見せる。店で注文を受ける人と、料理を作る人は、別の人であることが多いから
・カードには「ベジタリアン」「ハラール」の一言より、食べられない物の名前を1つずつ書く
・だしやみりんのように、見た目では分からない材料も書いておく
カードは、食べられるかどうかを店の人と確かめるための道具です。見せるだけで、安全が保証されるわけではありません。
アレルギーのある人には、国や府が作った、絵で伝えるシートもあります。この記事のカードと組み合わせて使えます。
1 言うより、見せる ― 書いた字は、形を変えずに手渡せる
日本では、お店で売っている包装された食品には、アレルギーの原因になる物の表示が法律で決まっています。一方、レストランの料理には、その表示の義務がありません。だから店では、自分から伝えることになります。
伝え方について、消費者庁は、注文を受ける店の人と、料理を作る人は別であることが多い、と書いています。作る人にもきちんと伝わるように、口で言うのではなく、シートなどを使って確かめましょう、というのが消費者庁の案内です。
日本政府観光局も、肉や魚を食べない人に向けて、食べられない物を日本語で書いた説明やカードを印刷しておくよう勧めています。
見せるタイミングは、「居酒屋」の記事の「座ったらすぐ」と同じです。肉や魚を食べない人がコース料理の店を予約するなら、予約のときに伝えておきます。
話した言葉は、聞いた人の記憶の中にしか残りません。書いた字は、そのままの形で手渡せます。日本語が話せなくても、カードが日本語で伝えてくれます。
2 カードに書くこと ― 一言より、名前を1つずつ
「ベジタリアン」の一言では、伝わりきらないかもしれない
日本では「ベジタリアン」は外から入ってきた言葉で、意味がはっきりせず、広い意味で受け取られることが多い言葉です。「ベジタリアンの料理を」と頼むだけでは、伝わりきらないかもしれません。
そこで、何が食べられないかを具体的に言う。肉も、魚介も、だしやスープを含む動物からとった物も、食べない、と。店の人が迷っているようなら、「肉」には鶏肉や豚肉も、そして魚も含まれる、と言い添える。
店の人が渋っているように見えても、それは、ただ分かっていないだけかもしれません。カードに名前が並んでいれば、店の人が分かるための材料が、目の前にそろいます。
「五葷」も、野菜の名前で書く
台湾に多い、仏教の考えにもとづくベジタリアンの人には、においの強い野菜「五葷」を食べない人もいます。ただ、どの野菜を入れるかは、日本の公的な資料のあいだでも少しずつ違います(ねぎ、玉ねぎ、その両方)。だから「五葷」の一言より、避けたい野菜の名前をそのまま並べて書きます。
ハラール ― 豚肉とお酒を口にしない人も、同じ形で
豚肉やお酒を避けたい人にも、アレルギーや菜食のカードと同じ形で書いておくことを、この記事では提案します。
カードには、豚肉そのものだけでなく、豚のエキスや、ラードなどの豚の油、調味料や添加物に含まれる豚由来の成分(ゼラチンなど)も書いておけます。どれも、飲食店が気をつけるよう案内されている材料です。ハラールの肉でなければ食べない人は、そのことも書きます。
どこまで避けるかは、人によって違います。カードには、店の看板の言葉ではなく、自分の線を書きます。
カードの文例
自分の言葉を翻訳アプリで日本語にして、書き足したり消したりして使ってください。印刷して財布に入れても、スマートフォンの画面に出しても使えます。
アレルギーがある人の例
わたしは、えびとかにのアレルギーがあります。
この料理に、えびやかにが入っていますか。
調理器具やトングを分けて作れますか。
肉や魚を食べない人の例
わたしは、肉と魚を食べません。鶏肉と豚肉も食べません。
かつお節や煮干しのだしも食べません。
昆布やしいたけのだしなら、食べられます。
豚肉とお酒を口にしない人の例
わたしは、豚肉と、豚からとった物(ラード、ゼラチンなど)を食べません。
お酒も口にしません。みりんや料理酒を使った料理も食べません。
ハラールの肉(イスラームの決まりにしたがって処理した肉)でなければ、肉は食べません。
最後に「ありがとうございます。」と1行あると、カードを渡す時間が、ちょっとしたあいさつになります。
3 見えない材料 ― だしと、みりん
だしは、日本の料理の味の土台
日本の料理の味の土台にあるのが、昆布やかつお節からうまみを取り出す「だし」です。
多くの人にとって、だしは日本の料理のおいしさのもとです。食べられない人にとっては、見た目では分かりにくい材料になります。肉や魚が見えない料理にも、かつお節などが隠れていることがよくあります。納豆に付いてくるたれも、だしであることが多いのです。
それなら、だしを全部あきらめるのではなく、食べられるだしをカードに書いておく。動物からとった物を使わない料理なら、かつおや煮干しのだしは使えませんが、昆布やしいたけなどのきのこ、野菜のだしは使えます。食べられるだしが書いてあれば、日本の料理のうまみの土台を、自分も味わえる料理が見つかります。
みりんと料理酒も、見えにくい
もう1つ見えにくいのが、みりんと料理酒です。どちらも多くの日本料理に使われています。そばやうどんのつゆ(めんつゆ)も、みりんとしょうゆが土台です。一部のみそにも、「無添加」と書かれたものでなければ、アルコールが入っていることがあります。
調味料に少し含まれるアルコールまで避けるべきかどうかは、意見が分かれます。だからこそ、カードに自分の線を書きます。「みりんや料理酒を使った料理も食べません」と書くのか、「お酒を飲みません」だけにするのか。線が書いてあれば、店の人も、どの料理なら合うかを一緒に考えられます。
4 アレルギーのある人へ ― 公的なシートと、消費者庁のことば
絵で伝えるシートが2つある
食べ物の絵の下の四角を押して印をつけ、店の人に見せる。消費者庁がスマートフォン用に公開している「食物アレルギーコミュニケーションシート」は、そういう作りです。言語は、英語・中国語(簡体字)・韓国語・日本語。印をつけるには、先にスマートフォンにダウンロードしておく必要があります。出発前に保存しておけば、店の前で通信を気にせずに開けます。
食べ物の絵を指し、店が答えを指して返す。大阪府の「食物アレルギーコミュニケーションシート」は、繁体字やインドネシア語を含む11の言語で、そうやりとりできる作りです。飲食店が外国人のお客さんとやりとりするために、大阪府が作ったものです。
どちらのシートも、絵を指すだけで伝わるのが強みです。絵に無い物は、自分のカードに字で書き足して、2枚を一緒に見せられます。
消費者庁が書いていること
消費者庁は、食物アレルギーのある人とその家族に向けたパンフレットで、次のように書いています。
原因になる食べ物は人によって違い、ほんの少しで症状が出る人もいれば、少しなら食べられる人もいます。だから「食べられる/食べられない」の判断は、最終的に店ではなく、自分または家族がしましょう。
確かめるのは、責任者など、食物アレルギーに詳しい店の人に。店の人の「入っていない」は不確かなこともあるので注意が必要です。外食してよいとされている人でも、店でアレルギーであることを伝え、調理器具やトングなどの使い分けや洗浄ができるかを確かめましょう、とあります。
外食では、原因になる食べ物が、意図せずに混ざること(コンタミネーション)を完全に防ぐことは困難です。外食の利用は慎重に判断し、医師の指導に従うことが大切です。入っているか分からないときや、店に確かめても心配が残るときは、利用しないことも大切です。
同じパンフレットの見出しには、「誤食を防ぐのは、自分自身であるという意識をもって、外食・中食を楽しみましょう」とあります。カードは、店に任せるための紙ではなく、自分で決めるための材料を、店の人と一緒にそろえるための1枚です。
5 お店で買う食べ物は ― 包装の表示がたよりになる
コンビニやスーパーで売っている、包装された加工食品には、アレルギーの原因になる物の表示が義務づけられています。ただし、豚肉や牛肉、鶏肉、ゼラチンは、表示が勧められているだけの品目です(2026年4月時点)。パンやお菓子、甘い物に、ゼラチンやバターなどの動物の脂が入っていることもあります。
表示は日本語なので、カードに書いた字の形と見比べて探します。迷ったら、カードと商品を一緒に、店の人に見せられます。消費者庁が念を押すとおり、「表示がない=含まれていない」ではありません。それを頭に置けば、移動の日のお昼は、コンビニの棚からも、表示を見て選べます。
6 具合が悪くなったら ― 119と、カードの裏
救急車が必要なときは、119に電話します。消防庁の外国人向け「救急車利用ガイド」によると、緊急の病気やけがのときは、日本ではだれでも救急車を使えます。周りに日本語を話せる人がいれば、手伝いを頼みます。
アレルギーが出たときは、その場で料理の材料を店に確かめておきましょう。病院で、原因を確かめるのに必要になることがあるからです。アレルギーの症状が起きたときは医療機関に相談するよう、消費者庁のシートにも書かれています。
日本政府観光局の「Japan Visitor Hotline」(050-3816-2787)は、24時間、英語・中国語・韓国語で、事故や病気などのときの相談に応じています。
自分の健康状態をメモにまとめておくと便利です。食事のカードの裏に、そのメモを書いておけば、1枚が、食事の前にも、もしものときにも、自分の代わりに話してくれます。
備えがそろったら、あとは食事の時間です。店によっては対応できないこともありますが、カードを見せて、店の人と確かめ合えた1皿は、旅のなかで自分で選んだ1皿になります。
まずは、これだけ
食べられない物の名前を1つずつ、だしやみりんまで、日本語でカードに書いて持っていく。
アレルギーのある人は、消費者庁や大阪府のシートを出発前に保存しておき、食べるかどうかは最後に自分で決める。
緊急の病気やけがで救急車が必要なときは、119。